さつき荘のご案内

2008年11月に、茨城県桜川市の新しい敷地にさつき荘の新築工事が完成しました。

 真摯に人生を生きて、高齢となり、心身の機能が衰え、他人の手を借りなければならなくなった人達が、納得して過ごせる施設でありたい。親を入居させた家族が、親にできるだけのことをしてあげたと思える施設でありたい。そのように考えて、さつき荘の建て替えを計画しました。建て替え計画をスターとしてから竣工まで3年を超える月日を要しました。私達のこの施設に対する長年の思い入れを形にして、今、皆様にお見せすることができるようになりました。長い道程でした。当初考えていたよりも大変でした。多数の方にご支援をいただき、幾つもの困難を乗り越えることができました。ありがとうございました。お蔭様で、当初想像していたよりも随分と良いものができました。限られた予算のなかで、これだけのものができたのは、設計を担当した三橋建築設計事務所、建築を担当した鈴縫工業、床暖房工事を担当したミサト、外構工事を担当した足立建設、その他この工事と設備を担当した多くの方々の技術と力があったからです。

さつき荘の基礎工事
高層ビルが建つのかと周囲の人が
驚いた本格的な基礎工事でした

 さつき荘は、1972年(昭和47年)、に社会福祉法人県西会により開設された特別養護老人ホームです。開設以来40年以上にわたり、高齢者福祉のために努力してまいりました。この間に、高齢者福祉についての考え方は大きく変化しました。現在、国は、特別養護老人ホームにおける望ましい介護の形態として、個室ユニットケアを推奨しています。その考え方の根本には、介護が必要になっても、それまでの家庭における生活環境に近い状況で生活できるようにすることが入居者の幸せになるという判断があります。新さつき荘は、このような時代の流れに沿って建設することを決断しました。この決断をするについては、多くの方々の助言をいただき、時間をかけて検討しました。このような新しい形態の老人ホームがこの地域においても経済的に成り立つか否かについて懸念がありました。個室ユニットケアは桜川市においても成り立つのだ、できるのだ、という確信を持つことができました。この確信が正しいかどうか、この問題に対する答えは、これから何年間かをかけて探すことになります。

夕日に映えるさつき荘
夕日に映えるさつき荘

 ご来所いただければお分かりいただけるとおり、新さつき荘が建っている場所は、緩やかな南下がりの丘陵になっており、遠く南に筑波山を望み、北と西には間近に低い山並みがあり、南東には岩瀬の町並みがあります。広い敷地から眺める風景は、季節とともに移ろい、何時見ても素晴らしいものです。1年間にわたり、現場主任として、新さつき荘の建設に当たった鈴縫工業の石井正樹様が言った言葉のとおりです。「ここから見る夕日は、季節により、天候により、毎日変わる。1年間ここの夕日を見て来たが、飽きることがない。」と言っていました。秋には周囲の畑一面に蕎麦の花が咲きます。「県西総合病院から見ると、蕎麦の花の上に浮かぶさつき荘は、まるでお伽の国のようだ。」と県西総合病院の幹部の方が言っていました。

 以前に、岩瀬町で、将来住みたいと思う場所はどこかというアンケートを取ったことがあったと聞いております。アンケートの結果は、新さつき荘が建っている辺りが人気ナンバーワンであったそうです。

蕎麦の花の上に浮かぶさつき荘
蕎麦の花の上に浮かぶさつき荘

 このように秀でた自然環境の中に建つ新さつき荘は、建物全てが平屋建であり、居室全てが南向きになっています。それぞれの居室からは、広いベランダに出て日向ぼっこをすることもできますし、布団を干すこともできます。ベランダの先には庭が続いています。もし、入居者が自分の家を建てるとしたなら、きっとこうすることを望むであろうということを念頭に置きました。建物の設計においては、チームワークによる介護のし易さと対称形の建物の美しさとに重点を置きました。この建物の佇まい、特に、建物の左右のバランスと屋根の形は、左右対称の建物が単調な印象を与えない点において素晴らしいと思います。施設の内外にわたり、全体に、ゆったりとした開放的な空間をとり、入居者が施設に閉じ込められるという感じを持たないように設計しました。敷地には柵のようなものはありません。土留めの必要性と景観とを考え、敷地の境界に大きな石を並べました。これはなかなかの好評で、何人もの人がこの御影石の石積みを褒めてくれました。この辺は、御影石の産地ですが、これだけの数の石を揃えることは容易ではありません。この辺の石山を知り尽くした地元の人がいたからこそできた仕事です。

床全体に床暖房を敷設しました
床全体に床暖房を敷設しました

 全館全室に床暖房を設置しました。冬季に来所する多くの方が気付かれると思いますが、外からこの建物の中に入ると、フワッとした暖かさを感じます。個々の部屋ではなく、建物全体を均等に温めることにより、優れた居住環境を提供できるという考え方に基づいています。床暖房は、身体が不自由になった入居者の安全に万全を期するため、自己温度制御機能(Positive Temperature Coefficient特性といいます)を有する半導体床暖房を採用しました。この採用を決心するまでには、長い時間が掛かりました。現在日本で施行されている殆ど全ての床暖房方式について検討しました。さつき荘、さざんか荘において長年使用し、現在も使用している半導体床暖房機器の現状も検証しました。更に、東京電力が東京で運営している2つの有料老人ホームや河口湖近くの特別養護老人ホーム慶和荘における半導体床暖房の最近の実施例を見せていただき、施設長から運用実績や注意点についてお話を聞くことができました。床暖房機器の耐久性と電力料金が問題でした。このような施設の床暖房機器は故障すると、修復することは殆ど不可能です。故障した部分は暖房が効かなくなります。従って、故障し易い機器は採用できません。また、このような暖房設備は、大量の電力を使用します。電力料金を支払いきれるかは、計画段階から重大な関心事でした。3年を越える期間をかけて、色々な種類の床暖房機器の耐久性を検討し、電力料金を試算しました。ミサトの半導体床暖房の耐久性は信頼できると思うことができましたし、今後の施設運営のやり方次第で、収支が償う範囲の電力料金にすることができる筈であると考えられるようになりました。

 特別養護老人ホームは重度の介護を必要とする高齢者への対応が求められ、入居者の介護度は今後更に高くなることが予想されます。入居者の人間としての尊厳を守り、その終章をできるだけ満足の行くものにする介護を実施するためには、それを可能にするためのハードウェアが必要です。この点についても、幾つもの新しい施設を見せていただき、ユニットケアの経験と実情についてお話を聞かせていただきました。お聞かせいただいたお話を参考にして、設備においても、最先端の考え方と介護の実情を考慮した器具を用意しました。食事は、最新の考え方、HACCPと言われるNASAの宇宙開発計画において考案された食品の衛生管理の方式による厨房設計の考え方、を取り入れたオール電化厨房において自前で調理します。この厨房については、東京電力株式会社主催「電化厨房フォーラム21」の「快適厨房コンテスト2008」において特別賞を受賞しました。浴室は、介護状態に応じた3種類の入浴ができる設備を備えています。ベットは、全て、スリーモーター式の電動ベットです。ベット全体の高さと、上半身の高さと足の部分の高さを個別に上下できます。介護する者の負担を軽減し、働きやすい職場環境を実現するために必要なコストであると考えました。

 良い介護を実現するためには、良いハードウェアが必要です。しかし、もっと大切なのは、それを生かして毎日の介護を実際に行う人達の心です。この施設の設計に当たっては、この施設で働く者にとって働き易い施設にすることを念頭におきました。働く者のチームワークと連帯感が、働く者に満足感をもたらすと考えました。入居者の個別介護を強調するユニットケアの考え方と一見矛盾するかのようにも思われる働く者のチームワークを重視しました。新さつき荘はこの点においても特色のあるものとなりました。幸い、県の担当者の方々のご理解を得ることができました。特色ある施設の建設に理解を示して下さった方々のご期待に沿えるよう努力してゆきたいと思います。

 これまでも、職員一同の長年の努力があり、さつき荘における介護は、入居者とその家族はもとより、地域の人々からも高い評価を受けてきたと自負しております。介護する者も、勤続年数の長いベテラン揃いで、行き届いたケアを目指して日々研鑽を積み、努力しています。新しい施設にすることにより、居住空間と設備の面で格段の改良がなされ、働き易い職場となります。介護体制の人的な面でも一層の充実を図ることができるようになります。これからの長い風雪と時代の変化に耐えて、入居者の方々に納得できる居住環境を提供し、地域の皆様の高い評価を何時までも受けられる介護施設であり続けることを目指します。どうぞ、今後とも、私共に対し、皆様のご理解とご支援をいただけますようお願い申し上げます。

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